会長挨拶

2015年に楠田善治先輩の後を受け、第3代OB会長を拝命しました小林豊です。

この度、部のHPでOB会の欄を開設することになり、改めてご挨拶を申し上げます。会長就任から9年目になりますので、これまでの経験も踏まえて、本稿では“OB会の運営”に当たっての諸々の課題と私の所信について述べさせていただきたいと思います。

 

OB会の活動は色々あると思いますが、“組織”として最も取り組むべきは、やはり、現役の“サポーター”としての役割を果たし、部の存続と発展に寄与することだと私は考えています。

大学空手界の現状は、学連の加盟校の減少が危惧される状況にあり、殊に国公立大の減少が顕著です。歴史ある部が廃れて学連を抜けてしまうのは残念なことですが、ひと度落ちてしまうと殆んど戻って来ることはありません。

そうしたリスクヘッジの意味もあって、近年当部では4月に新入部員の獲得に積極的に乗り出します。スポーツ推薦のない国公立では自助努力しかありません。OB会としては新歓活動を後押しするため、毎年予算に新歓費を計上して資金面でバックアップします。

 

世界中を襲ったパンデミックのコロナ禍は当部にとっても大打撃でした。この異常事態は現場任せにはできないと判断し、緊密に現役と連携し危機感をもって対応しました。感染対策のガイドライン策定ではOB会が率先して情報を収集し、医学部出身OBの知見も借りて猛スピードで対応しました。改訂版を含めて2度策定し、同時に感染対策に必要な資機材の購入費用も全てOB会が支援しました。

2020年はコロナ禍のため全大会が中止になり大荒れの年になりました。阪大が主管であった七大戦も早々に中止が決定され愕然としました。しかし、何とか11月まで粘って、交流戦としての開催を提案し他校の同意を得ました。大学とも折衝し体育館の使用許可を取り付け、学連が活動停止の中、OB個々のつてで全空連の審判などを招聘し遂に実現にこぎ着けました。関西ではこの年開催された唯一の大会となり、まさに暗闇に一筋の光明が差し込んだ瞬間でした。

コロナ禍では難しい問題が相次ぎましたが、OB会はその都度“現場主義”に徹して対応しました。「未曽有の逆境にある現役たちを、いま支援しなくて何のためのOB会か⁉」という思いが、私たちのモチベーションの根底にありました。

 

国公立大においてOB会が現役支援を続けていく上で必要なことは、いかにOB会費の納入率を高めて収入を確保するかということだと思います。しかし、私が知る限り、OB会運営の基本ともいえるこの問題に真正面から取り組んでいる大学は殆んどありません。厄介な問題には敢えて触れないでおこうという感じです。おそらく、多くの国公立大ではOB会費が集まらず、現役支援に力を入れられないのが実情ではないかと思われます。それ故に部員のモチベーションも上がらず、しまいには学連を脱会するような事態に陥るのだろうと推察しています。私は学連などで私立のOBともよく話をしますが、「国公立では大会参加費などで大学から援助は一切ない」という話をすると非常に驚かれることがあります。私立大では大会参加費や交通費は大学から支給されるのが当たり前になっているからです。

当OB会はOB会費の納入方法に「口座振替制」を導入しました。これまでは振込み制だったため滞納する会員がかなりいて、収入不足の要因になり、現状では現役支援を縮小せざるを得ない状況になっています。よって、そうした状況を根本的に打開するため、将来にわたって阪大空手道部の経済基盤を支える制度改正に踏み切った次第です。これにより、現役支援を継続するためのシステム構築が可能になると考えています。現役たちには、「現役時代はOB会の支援を受けて負担の少ない環境で精一杯空手に打ち込み、卒部したら、今度は現役の活動を支援する“良きOB”になれ。」と話をしています。現役たちは「OB会の目的と仕組み、及び、OB会費の意義」を理解し、素直にOB会の支援に感謝し共感しています。そして、それによって部活へのモチベーションも高く維持しています。また、OB会が知っておくべきこととして、現役が金欠(笑)なのは昔も今も変わりありません。

 

阪大空手道部の存在意義は、一言で言うならば、「部員の成長」にあると考えています。それは創部以来の当部の理念である「空手道を通じて人格形成を行い、人材を育成する」ことに通じます。また、古臭いと言われるかもしれないが、誠実・不屈・謙虚・礼節の道場訓は、武道を志す者の心得として、今なお大切なことであると思っています。この数十年の間に武道からスポーツ競技へと空手界は変貌を遂げ、変わってしまった部分もたくさんありますが、根本の精神まで変わる必要はないと思っています。むしろ、原点の武道精神にスポーツマインドが融合すれば、空手はさらに素晴らしい魅力あるものになると考えています。例えば、エンジョイ、チームワーク、ノーサイドなど、スポーツの楽しさや爽やかさが加われば、時代に相応しいクラブとして、今後も多くの人に受け入れられるでしょう。

当部の門を叩いた志をもった新入部員たちが、壁にぶつかりながらどういった過程で逞しく成長していくか、単に空手が強くなるだけでなく、人間としていかに成長していくか、4年後には自信と誇りをもって部を巣立っていけるのか、それらの道程こそ当部が真に追い求めているものです。

私たちOB会は、まさに現役部員の成長のための支援者(サポーター)といって過言ではありません。色々大変なことも多いですが、考えてみれば、社会的な人材育成の場として、これ程手応えが感じられ遣り甲斐のある活動はないだろうと、今は感じています。

さて、来年はいよいよ創部70周年です。歴代のOB・OGの皆様と現役諸君が一堂に会し、最高の想い出となり、未来の発展に繋がる記念イベントとなることを心より祈念しています。

 

                                                                                                                                                       大阪大学空手道部OB会会長 小林 豊

                                                                                                                                                                                       (2024年4月記)